共同研究パートナーである、法政大学大学院 政策創造研究科教授 石山恒貴氏のホームページに弊社代表梅本龍夫の書評が掲載されました。
書評
『定年前と定年後の働き方—サードエイジを生きる思考』を一読、この本を「必読書」と太鼓判を押したいと思います!
理由は3つ:
① 理論と実証研究をもとに、定年前後の(多くは正規雇用)ビジネスパーソン(特に男性)がどのような心理状態にあるかを「客観的」に理解できる情報を提供しています。この分野のことは、予断や思い込み、エイジズムを含むアンコンシャスバイアスが多いのですが、それらを排除した、立体的な姿がくっきりと見えてきます。この入り口は眼からウロコです。理論と実証研究は確実に価値を生む好例です。
「(シニアの働き方への)悲観的な捉え方は、幸福感と仕事への熱意の調査を見る限り、あてはまっていなかった。むしろシニアの働き方への悲観的な捉え方は、神話の類だったのかもしれない」p.48
② 「定年前後のプロセスを分断せず連続的にとらえることが望ましい」という具体的な指摘も納得です。そのために「たそがれ研修」でなく「第一線で活躍する能力」を作り込んでいくことの大切さを指摘しています。どういう定年後を生きるかは、各自が自由に判断し多様であってよいという大前提のもと、エイジズムに入り込まないための具体的な取組み方法が示されています。
「理論を知らなくても実践はできる。ただ、理論を知っていれば、さらに効果的に実践できる可能性がある。(中略)その際は定年前と定年後を連続的に捉えることが望ましい」p.78
③ 客観と主観のいいあんばいでのブレンド。石山さん自身が「当事者」であり、自身が研究対象でもあるという自覚のもと、客観と主観の往来をしています。まさにご自身が越境学習的に「定年前と定年後」というテーマを体験しアンラーニング&リラーニングを繰り返している姿勢が織り込まれています。石山さん自身の思いや願いが、行間にあらわれ、共感できます。
「筆者も今や、サードエイジの只中にある。研究課題に対して、それを自分と切り離した課題と考えることは、様々な困難がつきまとうだろう」p.227
本書に特に言及はないですが、リンダ・グラットンが提唱するポートフォリオワーカーを思い出しました。私自身、そのような働き方をしているので、1週間の中でも、何度も、小さな越境を繰り返し、アンラーニングとリラーニングをしている実感がありましたが、本書でその理由がよくわかりました。
ライフデザインを進める意欲と視点をたくさんくれる本です。