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​梅本龍夫

教育実績

​教育実績

授業名:社会組織とフォロワーシップ

現代社会の主役はリーダーではなくフォロワーである。民主主義の基本ルールはフォロワー(有権者)がリーダー(政治家)を選ぶことにあるが、これは政治以外の組織的な活動においても、本質的には同じといえる。ピラミッド型階層を前提とする企業組織でも、上司が一方的に物事を決め命令を下し、部下は盲目的に服従するという関係は、その有効性を失いつつある。

現代は、あらゆる場面でリーダーシップの必要性を強調する傾向が強いが、リーダーとフォロワーは本質的に対等であり、リーダーシップはフォロワーシップと一対のものである。理念や活動目的をリーダーと共有するフォロワーが、自律的に活動することではじめて、組織も社会も、本来もてる力を発揮できるようになる。

本授業では、フォロワーシップの位置づけを明確に定義するとともに、社会デザインの課題を実装していく段階で成功のカギを握る自律衆知型フォロワーのあり方を実践的に探求する。

​授業内容

第1回のオリエンテーションのあと、下記4ステージで展開し、最後に総括の時間をもつ。経営戦略を「リーダーとフォロワーが共有する物語」として見ていく。
(1)マネジメントの基本的枠組みを学ぶ(リーダー中心の物語づくり)
(2)マネジメントの枠組みを現実に当てはめる(リーダーからフォロワーへの語り)
(3)「違い」を創りつづける(フォロワー中心の組織学習)
(4) 社会とつながる(リーダーとフォロワーの協働編集)


理論と事例研究を通して、戦略とは、「加筆修正され続ける未完の物語」であることを実感する。優れた戦略は、「仮説―検証」を繰り返す科学的アプローチを組織に定着させ、組織構成員を絶えざる学習へと誘う。組織学習の成果を描写するものが戦略ストーリーとなる。

 

授業名:経営戦略と社会実装

戦略とは「違いを創る」ことで競争優位を築く行為である。営利組織はもとより、非営利組織や社会的活動においても、経営戦略(違いを創るマネジメント)の巧拙が活動の成否を分ける。しかし財政難などの理由で、「公助」から「共助」「自助」への流れがある中、ビジネスの手法が粗雑な形でパブリックセクターに応用されるケースがある(過剰な競争原理、利益至上主義、成果主義・能力主義による切り捨てなど)。


経営戦略を社会的活動に有効に実装するためには、戦略を社会的なテーマと調和させる枠組みが必要である。本授業では第1に、戦略と戦略でないものを明確に定義する。第2に、リーダーとフォロワーが一貫性のある戦略ストーリーを共有する方法を提示する。第3に、経営戦略によって生まれる競争優位を社会全体の底上げに活かす道を探求する。

​授業内容

第1回のオリエンテーションのあと、下記4ステージで展開し、最後に総括の時間をもつ。経営戦略を「リーダーとフォロワーが共有する物語」として見ていく。
(1)マネジメントの基本的枠組みを学ぶ(リーダー中心の物語づくり)
(2)マネジメントの枠組みを現実に当てはめる(リーダーからフォロワーへの語り)
(3)「違い」を創りつづける(フォロワー中心の組織学習)
(4) 社会とつながる(リーダーとフォロワーの協働編集)


理論と事例研究を通して、戦略とは、「加筆修正され続ける未完の物語」であることを実感する。優れた戦略は、「仮説―検証」を繰り返す科学的アプローチを組織に定着させ、組織構成員を絶えざる学習へと誘う。組織学習の成果を描写するものが戦略ストーリーとなる。
 

 

授業名:多様性社会とパーソナリティ類型

多様性社会とは、性別、年齢、民族、人種といった生得的属性のみならず、宗教、哲学、思想、嗜好といった価値観や行動様式の違いをお互いに受け入れ、すべての人々が自分らしく生きられる社会といえる。多様性社会は、異なったものが対立せず、共存できる社会であり、人々はひとつの答え(究極の立場)に固執せず、柔軟に対応する。また、新奇で異質なものを取り入れ日本独自の価値に変換できる柔軟な編集性や創造性をもった社会でもある。


しかし、自分と異質で理解し合えないと感じる他者が増えると、多様性社会は対立、排除、差別といった軋轢を生み、無関心、偏見、分断といった「心の壁」を築くなど、さまざまなマイナス面が増える。好むと好まざるとに関わらず、社会の多様性は今後一層高まっていく。そうした新しい社会環境を上手に迎えるには、他者のさまざまな「相異」の奥に理由があり、動機があることを理解することが大切である。

自分と異なる人々と交流の場をもち、対話を心がけることで、理解が深まる。「お互い違っていていい」と思えることは、多様性社会を生きる基本的姿勢となる。同時に、「相異」の奥にたくさんの「相似」があることを知ることも大事だ。心理学を基盤とするパーソナリティ類型論は、生得的属性や価値観の相違に関わらず、一人ひとりの心の傾向性や行動パターンは、普遍的な原理(人間性の本質)から生じることを教えてくれる。

 

さらに、一人ひとりの人間だけでなく、企業などの社会組織や、地域コミュニティ、国家レベルの集合体にも、パーソナリティ類型の特定の傾向性が反映されていることが多い。パーソナリティ類型論は、多様性(相異)は人間性(相似)から生じていることを示すことで、異なるものへの深い共感をもたらす。「誰しも同じ人間性を共有している」ことを知ることで、多様性を包摂する視座を獲得できる。それは、多様性社会のポジティブで健全な側面を引き出す知恵となり、社会デザインの可能性を高める。

​授業内容

  •  第1回のオリエンテーションのあと、多様性社会を理解する枠組みとして、「企業と多様性」「地域と多様性」「個人と多様性」について考察する。

  • 多様性社会を読み解く理論的枠組みとして、パーソナリティ類型論の9類型の概要を整理する。今西錦司著『生物の世界』の「相異と相似」の概念を援用しつつ、パーソナリティ類型ごとの統合(健全化・解放)と分裂(不健全化・病理)のダイナミクスを考察する。

  • パーソナリティ類型と対応する社会類型を考察し、多様性社会のパターン化を試みる。さらに、多様性社会の「相異」の奥にある「相似」に着目し、多様性を包摂する視点を得るとともに、分裂(社会的排除と分断)に向かおうとする社会を、統合(社会的受容と包摂)に方向転換する知恵を探る。

  • 総括として、豊かなでポジティブな多様性社会を創造するための社会デザイン的視点を整理する。
     

 

授業名:ライフストーリーと社会的帰属

安定した社会においては、個人の人生は、節目ごとの「通過儀礼」をなぞる。それは社会的規範を象徴的な体験を通して学び、帰属を深めていくプロセスとなる。しかし、変化が激しく不安定な社会においては、規範自体も流動化し、社会的帰属を確立することが難しくなる。


東日本大震災は、未曾有の大災害であっただけでなく、私たちが築き上げてきた社会の前提を揺るがすアイデンティティ・クライシスでもあった。そして世界は、グローバリズムとローカリズムがせめぎ合う時代に入った。私たちの社会そのものが、出口の見えない巨大な「通過儀礼」に遭遇している。そういう時代にあっては、個人は自分の人生の軌跡を現代史の中に積極的に刻む責務を負う。それは、不安定化し流動化する社会状況に流されず、主体的に社会的規範と帰属を再興していくプロセスとなる。

 

本授業では、「過去」の人生体験を振り返り、新しい意味づけ(語り直し)をする。それは時に、現在の自己を規定する(古い)アイデンティティの変容を意味する(特に「沈黙のストーリー」が出現するとき)。そして、刷新された「今」を起点に、「未来」を展望するライフデザインを通して「理想の人生」を手繰り寄せる。この一連のプロセスにチームで向き合うことで、新しいソーシャルストーリー(社会的規範と帰属の物語)の協働編集が始まる。

​授業内容

第1回のオリエンテーションのあと、 4ステージ(「起承転結」)で展開し、最後に総括の時間をもつ。本授業全体が「ひとつの物語」として展開する。
(1)起―ライフストーリー概論(過去・現在・未来を貫く物語)
(2)承―パーソナリティの発見(自己を客観視する枠組み)
(3)転―通過儀礼と社会(自己成長の契機)
(4)結―英雄の旅としてのライフストーリー(「理想の人生」のデザイン)
本授業では、社会学や心理学などの手法としてのライフストーリーを参考にしつつ、厳密な学問的定義にはこだわらず、社会デザインの現場を立体化する手法のひとつとして活用する。全員が体験者である「3.11」を起点に、「幼年期・青年期・中年期・老年期」という4ライフステージと、戦後70年余の「時代論・世代論」を組み合わせ、それぞれのライフストーリーをひとつなぎにすることで、「私の物語」を「私たちの物語・社会の物語」に変換していく。そうした集合的な物語は、多様な「理想の人生」を実現するプラットフォームとなる。

 

授業名:社会デザインとしての物語法

物語は、自分が何者で、何を成すために存在し、どこに向かおうとするのかを示唆する枠組みである。かつては、世界を包摂する「大きな物語」(ソーシャルストーリー)があったが、今日人々を引きつける物語の多くは、ブランドビジネスが発信している。しかし、私たちが真に創造的で主体的な存在になるためには、利潤目的を超える社会的枠組みが必要である。

近年は、排外主義、社会の階層化・サイロ化、貧富の格差の深刻化など、社会を分断する主義や価値観、あるいは経済状況が顕著になっている。私たちは、「他者を遠ざける物語」(小さな物語)ではなく、「他者と出会う物語」(大きな物語)を必要としている。

優れた物語は真実を伝え、共感の環を広げ、行動を促す。本授業では、「物語は社会変革装置である」という仮説を置き、社会デザインの研究と実践に役立つ具体的な装置(仕組み、道具)となる物語マトリクス法を提示する。物語マトリクス法は、【日常vs非日常】【欠落vs充実】という2軸でマトリクスを組む。そして4象限を【起:欠落状態の日常】⇒【承:欠落状態の非日常】⇒【転:充足状態の非日常】⇒【結:充足状態の日常】の順番で巡る。

物語マトリクス法の構造は、直感的に理解できるシンプルなものである。しかし、この装置を研究や実践に応用するためには、体験的ワークを積み重ねて実際に「物語を生きる実感」をもつことが大切である。本授業では、受講生それぞれの研究テーマ(修論)を主たる題材にし、本研究科で学び研究する真の意味と意義を探究する。そして自己の研究テーマ(修論)が、卒業後に「社会変革装置としての物語」に変換され、活用されることを目指す。

​授業内容

第1回「オリエンテーション」と、2回目の「社会変容装置としての物語」で物語マトリクス法の理論的背景を学び、その後11回連続で物語マトリクスの各段階(7つのエピソード)を順番に巡る。そして最終14回「総括」で、自己の研究テーマ(修論)を社会実装する物語の方向性を確認する。

物語マトリクス法の理論的背景として、ジョーゼフ・キャンベル著『千の顔をもつ英雄』、オットー・シャーマー『U理論』、および梅本龍夫著『数の神話』を援用する。

物語マトリクス法の理論を知的に理解するだけでなく、物語を社会変革装置として実際に活用していくことを想定したエクササイズやグループワークを織り込んだ授業をおこなう。

 

授業名:サードプレイス論への招待

ファースプレイスである家、セカンドプレイスとなる職場などとは違う何かを求めて、人はサードプレイス(第3の場所)に通う。そこでは、プライベートとパブリック、ビジネスとソーシャルなど、従来別のものと考えられてきた領域が、融通無碍に交錯する。「とびきり居心地のよい場所 The great good place」とも表現されるサードプレイスは、社会的役割のペルソナ(仮面)をはずし、「一個人」に戻れる場所である。

日本では伝統的に居酒屋(ナショナルチェーンでない地元の個人経営者による赤提灯など)がサードプレイスの機能を果たしてきた。近年、コミュニティカフェ(認知症カフェ、哲学カフェ、学びとワークショップの場)や地域食堂・こども食堂などが、共助を含む地域コミュニティの多様な活動のプラットフォームとしての役割を果たしてきている。また、行政における図書館やミュージアムなどの公共ホールのリニューアルと地域活性化の施策として、サードプレイス機能の付加が模索されている。

 

しかし現代社会では、サードプレイスを持てないだけでなく、ファーストプレイスやセカンドプレイスにも事欠く人々も少なくない。本講座では、サードプレイスと対比される「居場所」というキーワードに着目し、個人が他者と交流する「場」の在り方や課題、可能性などを俯瞰する。

サードプレイスは、レイ・オルデンバーグが提唱したコンセプトであり、これをサードプレイス論の入口の理論的枠組みとして使用する。しかしオルデンバーグの論は、欧米の歴史を前提としており、本講座では、現代日本の社会事情と文化特性にふさわしい「日本的サードプレイス」の在り方を探究していく。具体的には、①交流型(オルデンバーグ流)とマイプレイス型(スターバックス流)のハイブリッド型、②聖と俗をむすぶメディア型―が日本的サードプレイスの2大特徴であるという仮説のもとで授業を展開する。

​授業内容

第1回のオリエンテーションのあと、4ステージで展開し、最後に総括の時間をもつ。本授業全体が「サードプレイス物語」として展開する。

  • ファーストプレイス(家という基盤)

  • セカンドプレイス(働くということ)

  • サードプレイス(第3の場所)

  • 社会における居場所(社会的包摂)

文献およびケーススタディーとグループワークを通して、サードプレイスの意味と意義と課題を探究し、社会デザインの現場にもたらす効果を探求する。